2015年06月22日
B&T 最新アサルトライフルAPC556レポート
先週に引き続きスイスB&T社のAPC(アドバンスド・ポリス・カービン)シリーズ(9mm、.45 ACP, .223、556mm、.300 Whisper)のレポートをします。

APC556

右下のストックはのフォールディングストック(チークパッド付き)
APCとは、Advance Police Carbineの略で、最初は9mm口径の新世代サブマシンガンとしてH&K社製MP5短機関銃の後継の座を狙って開発されました。
マニア好みの派手なデザインでは無いものの、質実剛健で無骨な外見で、私は一目で『これは使える銃だな』というのが第一印象でした。
MP-5は優れた銃で、1980年の在ロンドンイラン大使館占拠事件においてSASが使用したのが代表例にあるように、その信頼性と実戦での有効性は疑いの余地がありません。

APC9(9mm弾)

よってB&T社はMP-5を使い続ける軍・警察機関向けに、数多くのアップグレード・パーツを開発・提供しています。
APCも開発当初より改良を重ね、今年は軍隊向けに5.56mm仕様が発表されました。
ここではこの5.56mm口径のAPCを中心に話を進めていきたいと思います。
APC 556について語る前に、私が良い自動小銃か否かを判断する基準に関して述べてみたいと思います。
命中精度や耐久テストに関してはNATO基準を満たしている、というのは当たり前の事なので、ここでは省略します。
確認しますが、これは私個人の経験から出した基準であり、他の何とも関係が無い事をご理解ください。

-安全で作動不良が起きず、作りが頑丈な事。
(まず軍用小銃とは安全で頑丈でなければなりません。これは説明の必要がないほどです)
-M16のマガジンを使用可能ながらも、信頼性のある専用ポリマー製のマガジンを使用する事。
(既存のM16マガジンはアルミ製で耐久性に問題があります。ですので専用の頑丈なポリマー製のマガジンが必要です。なおかつNATO基準であるM16のアルミマガジンを使用できる事が条件となります)
-信頼性のある照準装置が付属している事。
(照準装置が粗悪だと、当然高い命中精度が期待できません。APCには基本的にAimpoint T-1が付属してきますが、要望によって変更する事も可能)
-サプレッサーが装着できる事。
(隠匿と兵士の視聴機能を守るため)
-ストックが伸縮式でフォールディングである事
(空挺降下可能)。
-左右両利きの射手が容易に取り扱える事。
-引き金がTwo Stageで引きやすい事。
(引き金が引きにくいと、新兵の訓練に時間がかかる。Clean and Crispなトリガーが必要)
-分解結合がツール不要で行えて、*クラス1、2、3、の各レベルにおいて保守が容易な事。
※注釈 米陸軍における保守のクラシフィケイション。
クラス1メンテナンス-オペレーターが対応できる故障。クラス2メンテナンス-武器庫担当アーマラーが対応できる故障。
クラス3メンテナンス-メーカーに送るか、パーツが完全に破損して交換を必要とする故障。

APC 556はこの基準を全て充分すぎるほど満たしています。
特に左利き射手に対応して、全てが左右対称に設計されている点が優れています。
これは社長のカール・ブルッガー氏が左利きであるため、設計段階でその点を重点的にチェックされます。
リコイルも特殊なハイドロバッファーによって非常にマイルドで、連射時にサイトの戻りが速い、という点も見逃せません。
しかもストックが折りたためるため、戦車兵や機械化歩兵、空挺歩兵などが使いやすいのは言うまでもないでしょう。
日本の防衛省が陸自次期小銃を模索中と聞きました。
私はAPC 556をライセンス生産も含めてオプションのひとつに入れていいのではないかと思います。

日本の工作機械のレベルは世界でもトップレベルにあります。
付け加えますと、B&T社も日本製CNCマシンを使用して生産しています。
ですが日本のメーカーには経験と知識がありません。
そうなると独自で次期小銃を開発しようとすると、チンチクリンな小銃が出来上がってくるのはほぼ間違いないでしょう。
それならばあえてプライドとエゴを捨てて、優れた海外製の小銃をライセンス生産して採用した方が、現場のためになると私は考えます。
永世中立国であるスイス製という事で、政治的な障害も最小限になるはずです。
さらに細い事を付け加えますと、APC 556には専用のカートキャッチャーを取り付けることができ、薬莢を100%回収できる点なども自衛隊向きです。

軍用モデルとして唯一気になった点ですが、40mmランチャーが付属できない点です。
この点をメーカーに指摘した所、『ランチャーを小銃に取り付けると、重量がかさんで取り扱い難くなる。
よってあえて除外しました』との答えが返ってきました。
これは正しく、米陸軍にM203の後継機として採用されているH&K M320ランチャーですが、私が友人の大尉に聞いてみたところ、『良く当たるのは当たるが、M203と比較して重すぎる。
よって小銃に付けて使う射手は皆無で、みんなスタンドアローンで使用している』との答えが返ってきました。
B&T社もその点をよく理解していて、40mmランチャーはGL-06という独自のシステムがスタンドアローンで存在します。
それでいいと私は思います(GL-06はまた別の機会に紹介します)。
またバイヨネットラグが無い点ですが、これは現代のシアターでは損害が多大にでる銃剣突撃は認められない、という政治的な事情があります。
よって悲しいですが、銃剣は消え行く運命にある装備なのかもしれません。
余談になりますが、先日私が勤務していたワシントン州JBLM基地内を運転していたところ、銃剣戦闘を訓練場から刺突用のダミーが撤去され、大量に積まれていました。
関係者に話を聞くと、銃剣突撃訓練の必要が無くなったので廃止になったとの事です。
私が現役時代、泥だらけになって気合いを発しながら全力で突いて殴ったダミーたちであるだけに、感慨深くなりしばらくその場に立ちつくしてしまいました。

話がすこし逸れましたが、APC 556は派手な外見は無いものの、質実剛健で優れた小銃であるのは間違いありません。今後は20インチ銃身で倍率のあるスコープ付きのシャープシューター専用EBRモデルなど、バリエーションが増えて進化し ていくのが予想されます。それにともなって、APC 556を採用する国が今後増えていくでしょう。
口径も警察用に9mm、.45 ACPと.223、軍隊向けに5.56mmと300ウイスパーと、ニーズに合わせて口径を選択できる点もすばらしく、パーツの交互性が56%と、ロジスティックを考慮したシステムとなっている点も見逃せません。

B&T APC 556、久しぶりに手にした『使える小銃』でした。


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APC556

右下のストックはのフォールディングストック(チークパッド付き)
APCとは、Advance Police Carbineの略で、最初は9mm口径の新世代サブマシンガンとしてH&K社製MP5短機関銃の後継の座を狙って開発されました。
マニア好みの派手なデザインでは無いものの、質実剛健で無骨な外見で、私は一目で『これは使える銃だな』というのが第一印象でした。
MP-5は優れた銃で、1980年の在ロンドンイラン大使館占拠事件においてSASが使用したのが代表例にあるように、その信頼性と実戦での有効性は疑いの余地がありません。

APC9(9mm弾)

よってB&T社はMP-5を使い続ける軍・警察機関向けに、数多くのアップグレード・パーツを開発・提供しています。
APCも開発当初より改良を重ね、今年は軍隊向けに5.56mm仕様が発表されました。
ここではこの5.56mm口径のAPCを中心に話を進めていきたいと思います。
APC 556について語る前に、私が良い自動小銃か否かを判断する基準に関して述べてみたいと思います。
命中精度や耐久テストに関してはNATO基準を満たしている、というのは当たり前の事なので、ここでは省略します。
確認しますが、これは私個人の経験から出した基準であり、他の何とも関係が無い事をご理解ください。

-安全で作動不良が起きず、作りが頑丈な事。
(まず軍用小銃とは安全で頑丈でなければなりません。これは説明の必要がないほどです)
-M16のマガジンを使用可能ながらも、信頼性のある専用ポリマー製のマガジンを使用する事。
(既存のM16マガジンはアルミ製で耐久性に問題があります。ですので専用の頑丈なポリマー製のマガジンが必要です。なおかつNATO基準であるM16のアルミマガジンを使用できる事が条件となります)
-信頼性のある照準装置が付属している事。
(照準装置が粗悪だと、当然高い命中精度が期待できません。APCには基本的にAimpoint T-1が付属してきますが、要望によって変更する事も可能)
-サプレッサーが装着できる事。
(隠匿と兵士の視聴機能を守るため)
-ストックが伸縮式でフォールディングである事
(空挺降下可能)。
-左右両利きの射手が容易に取り扱える事。
-引き金がTwo Stageで引きやすい事。
(引き金が引きにくいと、新兵の訓練に時間がかかる。Clean and Crispなトリガーが必要)
-分解結合がツール不要で行えて、*クラス1、2、3、の各レベルにおいて保守が容易な事。
※注釈 米陸軍における保守のクラシフィケイション。
クラス1メンテナンス-オペレーターが対応できる故障。クラス2メンテナンス-武器庫担当アーマラーが対応できる故障。
クラス3メンテナンス-メーカーに送るか、パーツが完全に破損して交換を必要とする故障。

APC 556はこの基準を全て充分すぎるほど満たしています。
特に左利き射手に対応して、全てが左右対称に設計されている点が優れています。
これは社長のカール・ブルッガー氏が左利きであるため、設計段階でその点を重点的にチェックされます。
リコイルも特殊なハイドロバッファーによって非常にマイルドで、連射時にサイトの戻りが速い、という点も見逃せません。
しかもストックが折りたためるため、戦車兵や機械化歩兵、空挺歩兵などが使いやすいのは言うまでもないでしょう。
日本の防衛省が陸自次期小銃を模索中と聞きました。
私はAPC 556をライセンス生産も含めてオプションのひとつに入れていいのではないかと思います。

日本の工作機械のレベルは世界でもトップレベルにあります。
付け加えますと、B&T社も日本製CNCマシンを使用して生産しています。
ですが日本のメーカーには経験と知識がありません。
そうなると独自で次期小銃を開発しようとすると、チンチクリンな小銃が出来上がってくるのはほぼ間違いないでしょう。
それならばあえてプライドとエゴを捨てて、優れた海外製の小銃をライセンス生産して採用した方が、現場のためになると私は考えます。
永世中立国であるスイス製という事で、政治的な障害も最小限になるはずです。
さらに細い事を付け加えますと、APC 556には専用のカートキャッチャーを取り付けることができ、薬莢を100%回収できる点なども自衛隊向きです。

軍用モデルとして唯一気になった点ですが、40mmランチャーが付属できない点です。
この点をメーカーに指摘した所、『ランチャーを小銃に取り付けると、重量がかさんで取り扱い難くなる。
よってあえて除外しました』との答えが返ってきました。
これは正しく、米陸軍にM203の後継機として採用されているH&K M320ランチャーですが、私が友人の大尉に聞いてみたところ、『良く当たるのは当たるが、M203と比較して重すぎる。
よって小銃に付けて使う射手は皆無で、みんなスタンドアローンで使用している』との答えが返ってきました。
B&T社もその点をよく理解していて、40mmランチャーはGL-06という独自のシステムがスタンドアローンで存在します。
それでいいと私は思います(GL-06はまた別の機会に紹介します)。
またバイヨネットラグが無い点ですが、これは現代のシアターでは損害が多大にでる銃剣突撃は認められない、という政治的な事情があります。
よって悲しいですが、銃剣は消え行く運命にある装備なのかもしれません。
余談になりますが、先日私が勤務していたワシントン州JBLM基地内を運転していたところ、銃剣戦闘を訓練場から刺突用のダミーが撤去され、大量に積まれていました。
関係者に話を聞くと、銃剣突撃訓練の必要が無くなったので廃止になったとの事です。
私が現役時代、泥だらけになって気合いを発しながら全力で突いて殴ったダミーたちであるだけに、感慨深くなりしばらくその場に立ちつくしてしまいました。

話がすこし逸れましたが、APC 556は派手な外見は無いものの、質実剛健で優れた小銃であるのは間違いありません。今後は20インチ銃身で倍率のあるスコープ付きのシャープシューター専用EBRモデルなど、バリエーションが増えて進化し ていくのが予想されます。それにともなって、APC 556を採用する国が今後増えていくでしょう。
口径も警察用に9mm、.45 ACPと.223、軍隊向けに5.56mmと300ウイスパーと、ニーズに合わせて口径を選択できる点もすばらしく、パーツの交互性が56%と、ロジスティックを考慮したシステムとなっている点も見逃せません。

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