2024年10月05日

AKUのブーツについて

AKUのブーツについて
今回は、イタリア製のブーツ、AKU社のSPIDER IIを使用した感想をレポートしてみたいと思います。
まず、歩兵にとってブーツは最重要ともいえる装備のひとつです。
歩兵とは名の通り、『歩く兵士』です。歩けなくなった歩兵は使用価値がありません。
すなわち戦闘時に死を意味します。
なので自分の足に合うブーツを見つけるのは死活問題と言えます。私が現役の頃は、支給品のブーツのみの使用が許され、個人で選択する事は御法度でした。
AKUのブーツについて

なのでそれができる現代の兵士は羨ましく思います。
当時の支給品ブーツは全革製で重い上にクッションも硬く、長い距離を行軍していると足と膝に負担がかかる物でした。
それで私たち空挺歩兵は、フォート・ブラッグ基地のすぐ外にある『Boots Master』というカスタムショップにブーツを持ち込み、自分の足に合うように改造していました。そういった経験を積んだからこそ、今は手に取っただけでそれがいいブーツか悪いブーツかを判断できるようになりました。
熟練のすし職人が、豊洲市場でマグロを見ただけでいいマグロかそうでないかを判断できるのと似ています。
AKUのブーツについて

まず手に取って最初に感じたのは、質実剛健なデザインです。
パッと見どこのメーカーのブーツだかわかりません。
これは落下傘降下時に引っ掛かる可能性がある突起物を嫌う、空挺隊員向けだとすぐに理解できました。
これは後で聞いた話ですが、米海軍シールチームや、米陸軍SF(グリーンベレー)の要請によって開発されたそうです。
両部隊とも空挺部隊である事から、さもありなんと思いました。

次に感じたのが、その曲線です。まるで靴職人が木の型を使って丁寧に手作りで作り上げたような曲線をしています。
履いてみると幅の広い自分の足にピッタリとはまり、ホットスポット(当たって水ぶくれができる箇所)がありません。
これも後でわかった事ですが、実際に靴職人が木の型を使って、手作りで1足ずつ作り上げるそうです。
この辺はイタリアのクラフトマンシップが見事に出ています。

素材は最新のAIR8000が使われ、蒸れが最小限に抑えられています。
温暖から亜寒帯までの使用を想定しているようです。
靴底のパターンは市街地からある程度平らなオフロード向けの物が採用されていました。
重装備の行軍には向きませんが、コンバット・ライト(アーマーとヘルメット、3Daysまでの小型のアサ
ルトパック)での使用を想定しているのでしょう。
まさに精鋭軽歩兵部隊での最大公約数とも言える設計・デザインです。
AKUのブーツについて

早速このブーツを履いて実弾射撃する機会がありました。そこで感じたのが前足底の薄さと、後足底の厚さのバランスです。
前足底は程よく薄く、地面を感じられる程度です。
前足底が厚過ぎると、射撃時だけでなく、ペダルが感じられずに運転時などにおいても危険です。
後足底の厚さの意味は射撃時に分かりました。
立射時に反動を丁度良く吸収できる厚さでした。
後足底の厚さが薄過ぎると、反動に負けて後ろにバランスを崩してしまいます。

アキレス腱の部分が大胆にカットされている点も気に入りました。
ダッシュ時に邪魔にならず、ブーツでありながらローカットに程よく近い感触です。
それでいて踝はシッカリとガードされています。
重量も片方で550g程度と、堅牢でありながら軽量です。

良い事ばかり書きましたが、足の形は各個人で異なります。
このモデルが万人に合うはずもありません。
ですので購入時は必ず実際に着用してみて決める事をお奨めします。
『どこそこの誰々が使ってるから』という理由で、安易に通販などで購入しないでください。

最後になりますが、ブーツと同様に大事なのが靴下の選択です。
足とブーツと靴下は、ハンバーガーセット(ハンバーガーとポテトとドリンク)のような存在と思って
ください。
せっかくいいブーツに出会っても、靴下の選択を誤ると台無しになってしまいます。
足が蒸れたり豆ができたりと、パフォーマンスが低下してしまいます。
そして言うまでも無く、足のケアも重要です。

今回は久しぶりに自分に合うブーツに出会ったので、紹介させていただきました。

AKUのブーツについて
AKU NS 564 Spider II


飯柴






Posted by ELITEMASTER  at 14:37 │Comments(0)

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