2022年05月16日

サプレッサーを使用した戦術(実戦編)

サプレッサーを使用した戦術(実戦編)

前回まで、サプレッサーについて説明を行いました。今回はサプレッサーを使用した際の、実際に得る戦術的利益(Tactical Advantage)について述べてみたいと思います。
(前回までに述べた項目は省く)

●コミュニケーションの向上
サプレッサーを使用した戦術(実戦編)

米陸軍国際スナイパー大会で、サプレッサーを使用するチームと使用してないチームを比較すると、まず明確な違いに気付きます。サプレッサーを使用していない部隊は射撃時に大声で怒鳴り合うようにコミュニケーションを取っています。
サプレッサーを使用しているチームは普通に会話するようにコミュニケーションが取れていました。
このアドバンテージは説明の必要が無いくらいです。
サプレッサーを使用した戦術(実戦編)

銃声はもちろんですが、大声で怒鳴り合うと、当然周辺の音も聞き難くなりますから、接敵の音も聞こえなくなります。
これは非常に危険な状況です(ついでに体力も消耗します)。
もちろん他の音も聞き逃す可能性が高いですから、戦術的によくありません。またこれは自分の個人的な主観ですが、サプレッサーを使用しているチームの方が冷静な判断力を維持しているようにも見えました。当然と言えば当然の事です。

●IFF(敵味方識別)
サプレッサーを使用した戦術(実戦編)

エントリーチームなどの部隊がサプレッサーを全員に装備していた場合、屋内等での敵味方が入り乱れた戦闘状態で、容易に敵味方を識別できるようになります。
サプレッサーを使用しての射撃音は明らかに違いますから、例えば1階から現在2階の状況がどうなっているのか、ある程度把握できるようになります。
またもし2階での銃撃戦が『ボスッ、ボスッ、ボスッ』という音で終われば味方の部隊が敵兵を制圧して終わったのがわかります。
ですが『バン、バン、バン』とサプレッサー無しの銃声で終わった場合、味方の部隊が敵に制圧されてしまった可能性が高い事を意味します。
このように、音で敵味方を識別する事が容易になります。
もっともベテランの将兵になると、AKとARの射撃音の識別は容易にできますが、屋内のように音響が乱反射するとその識別も難しくなります。

●セカンドチャンス(スナイパー)
サプレッサーを使用した戦術(実戦編)

スナイパーが狙撃を行った場合、初弾を外すとまずセカンドチャンスはありません(よくスナイパーを『One Shot One Kill』と表現しますが、それは次弾のチャンスが無い事を意味します)。
銃声によって射撃した事が敵兵に完全にバレてしまいます。
敵兵は銃声がした方角に対して遮蔽物に身を隠しますから、次弾を撃つチャンスは殆ど無いでしょう。
この辺はハンティングと同じです。スナイパーにハンター出身者が多いのはこういった理由もあると思います。
ですがサプレッサーを装着していれば、数百メートル離れた敵兵に銃声は殆ど聞こえません(口径等にもよる)し、敵兵は着弾した方角に注意がいきますから、時間差によって次弾を発射できるチャンスが生まれます。
もし敵兵付近に着弾せず、敵兵が狙撃されたことに気が付かなければ、次弾を撃つチャンスはさらに広がります。

●メディア対策(警察狙撃犯)
サプレッサーを使用した戦術(実戦編)

瀬戸内シージャック事件のような状況で、警察の狙撃部隊が狙撃銃を発射したとしましょう。
非常線が張られているとはいえ、現場で銃声がすればメディアや野次馬の注意を引いてしまいます。
これは警察が最も嫌う事態です。ですがB&T社製SPR 300 PROのような消音銃を使用して狙撃すれば、雑音が多い現場ではまず気づかれることはありません。
というか、SPR 300 PROはそのような状況を想定して設計された狙撃銃です。
分解して小さなロープロファイル・キャリーバッグに入れて携行できるのも利点です。
私服で周辺のビル(狙撃位置)に入れば、メディアや野次馬に気付かれないでしょう。
逆に『いかにもSWAT』といったような仰々しい格好で大きな狙撃銃を抱えて
ビルに入れば、否が応でも目立ちますし、周辺のテンションは必要以上に上がってしまいます。
サプレッサーにはこういったテンションを抑える効果もあります。
サプレッサーを使用した戦術(実戦編)

最後になりますが、『サプレッサーで射撃すると、初弾だけ消炎が見えるけど、次弾からは見えなくなるのはなぜ?』という質問を受ける事があります。
あれはFirstRound Popという現象です。
初弾を撃つ前はサプレッサーの内部にある酸素があるので、ガスが燃え切らずにサプレッサーを付けていても消炎が見えてしまうことがあります(次弾からはサプレッサー内部に発射ガスが充満するので、この状況は起きない)。
これが嫌な場合は、銃身長を長くしたり、サプレッサーを別の物に交換したり、サプレッサー内部に少量の水を含ませたりすることで対処できます。

今回は数回にわたってサプレッサーについて述べてみました。
OTSではサプレッサーだけでなく、専門のインストラクターが定期的に講習を行っていますので、ぜひ参加して得た知識を勤務に役立ててください。

飯柴


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Posted by ELITEMASTER  at 18:39 │Comments(0)

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