2014年10月21日

米軍次世代高機動車トライアル


米軍次世代高機動車トライアル

ハンヴィーといえば、誰でも知っている米軍仕様の高機動多用途車です。民間にもH1/H2/H3などのハマーシリーズとして発売され、映画の影響などもあって、最も知名度の高い車両のひとつでもあります。少し前は、映画スターや歌手などのセレブは必ずハマーに乗っているといった、一種の社会現象にまでなり、ハマーのストレッチ・リムジンですら存在しました。そのカッコよくワイルドで強固なハンヴィーですが、1985年の登場以来30年を経過して、ついに引退する時が来ました。そこで現在、国防総省では次世代統合高機動車の選定を行っている最中です。

米軍次世代高機動車トライアル

大型契約とあって、多くのメーカーがトライアルに参加しましたが、最終的に三社に絞られました。ロッキード・マーチン社のJLTV、オシュコシュ・ディフェンス社のL-ATV、AM General社のBRV-O、の三車種です。今回、三車の最新プロトタイプを見ることができましたが、私なりの答えが出たと思っています。それを述べる前に、次世代高機動車に課せられる主な条件を簡単に説明してみましょう。

-モジュラー装甲を装着できる事。
-ラジエーター、燃料タンク等に被弾しても、継続して装甲できる事。
-タイヤが二本パンクしても走行可能な事。
-CH-47でエアリフトが可能な事。
-車両の真下でIEDが起爆しても、生存性が高い事。

その他にも採用条件はまだまだありますが、どれもがハードルの高い内容ばかりです。
結論から言いますと、私は現時点だとロッキード・マーチン社のJLTVが最有力候補だと思います。理由は多々ありますが、フルスクラッチの設計という点が大きいでしょう。三車種を公平に比較した上での、私なりの最大公約数と考えていただいて問題ないです。オシュコシュのL-ATVは大型のMRAPを小型化したデザインです。AM General社のBRAV-Oは現行ハンヴィーの発展型で、パーツの交互性などでは優れていますが、やはり長期に渡って活躍するには巌しいものがあります。私がBRAV-Oを見ていると、現役の中佐がBRAV-Oを同時に見ていて、私が同じ事を考えていた欠点をスバリと指摘していました。やはり現場での経験がある人間は考える事が同じなのでしょう。

米軍次世代高機動車トライアル

ただいずれの車種も現行のハンヴィーと比較して、非常に大型です。現行ハンヴィーとストライカー車両の中間という位置づけでいいかもしれません。車両の大きさから、米国が2000年代にアフガニスタンとイラクで行ったSASO(Stability and Support Operations)での苦い経験から、兵士の生存性(Survivability)を高めつつ、SASOと通常戦争(機甲師団の一部として)の両方に対応可能な多用途車を欲しているのがよくわかりました。
最終的な結果が出るのは、スケジュール通りにいけば2015年の7月です。ただ長期間の大型契約という事で、政治的な利権や陸海空海兵隊のそれぞれの思惑が交差し、一筋縄ではいかないと思います。果たして結論はどう出るのか、来年の7月が楽しみになってきました。

飯柴

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Posted by ELITEMASTER  at 22:13 │Comments(0)インストラクター

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