2015年06月18日

B&T SPR300 レポート

B&T SPR-300
今回は非常に珍しい銃を紹介します。
B&T社製SPR-300です。

SPRとは、Special Purpose Rifle(特殊目的ライフル)の略ですが、では何が特殊なのでしょうか。
まず通常の狙撃は、可能な限り遠距離から行うのが定石です。
ところがこのSPR-300は、近距離それも射程距離が150m以下(弾頭重量が125グレインスーパーソニック弾(640m/秒)を使用すれば、発射音が多少あるものの射程距離は300mまで伸びる)という使用が限定された特殊な銃です。


その用途を説明する前に、300ウィスパー弾薬に関して説明してみたいと思います。『ウィスパー』つまり『囁き』という意味ですが、その名の通り開発当初からサプレッサーを使用しての発射を前提に開発された弾薬です。
つまり弾道学的にサプレッサーを使用すると威力が不充分である45口径や9mm拳銃用弾薬の欠点を補う意図で開発されました。
サブソニック領域内で飛ぶ弾丸である.300ウィスパー弾薬は、より長い7.62mmサブソニック弾薬と比較して短い、軽量なアクション/銃器システムしか必要としないという大きな利点があります。
SPR-300を手にしてまず感じるのが『軽い!しかも小型だ!』という点です。

携帯用のバッグにすべてがセットされているSPR300(これなら移動にも非常に楽です)

そしてプローンの姿勢でボルトを前後に動かしても、ボルトが顔に当たらない、という利点がまさにそれでした。
これは射手にとって非常にありがたいシステムです。.300ウィスパーにより、音速のギリギリ下の弾速(サブソニック)をもって可能な限り高い弾丸エネルギーを被射体に与える事が可能です。
弾頭重量が重く初速が遅い(230グレイン・320m/秒ため、人体に対して強力なストッピングパワーを持った弾薬です。

300ウィスパー弾(音の静かなサブソニック弾)
大きさは通常の5.56mm弾と同じくらいですが、右の写真のように大きくて重い弾頭が装着され、火薬量も少なくなっています。


300弾頭重量が125グレイン・スーパーソニック弾(高速弾)

ではその用途はどのようなシチュエーションが考えられるのでしょうか。
軍事作戦はともかく、警察機構の狙撃手は周囲を封鎖して、可能な限り標的に近づく事が許されます。
その距離が100mを超える事はまずありません。
市街地では特にそうです。
つまりバリケードサスペクトなどを排除する時に、邪魔な存在であるメディアや野次馬に気づかれずに容疑者を無力化する事が可能となります。
また麻薬取締局などが麻薬の売人宅にガサ入れを行う場合、無音で番犬を排除したりもできます。
(麻薬の売人はガサ入れ時にトイレに麻薬を流す時間を稼ぐため、よく吠える番犬を飼っている)
警察だけに用途は限られると思いきや、そうでもありません。SPR-300はフランス軍特殊部隊に購入され、近年アフリカのマリであった動乱で実戦使用されました。


ゲリラのアジトを夜間に急襲したそうですが、相手は一体どこから弾丸が飛んで来るのか、それどころか何が起こったのか全く気がつかなかったそうです。
実際にサブソニック弾を撃った時の発射音は、『ボスッ』という程度で、マルイのエアガンの方がうるさいほどです。
日本の地理条件を考えると、警察機構が150mを超える狙撃が必要とされる情況はほぼ無いと思われます。
自衛隊にしても市街地戦闘ではそうでしょう。よってこのSPR-300は日本向けの狙撃銃ではないでしょうか。
SATを保有する各都道府県の警察には2丁ずつくらい装備してほしいと思います。




SPR300


最後に付け加えますと、この特殊弾薬を使用した銃器の将来性を見越してか、各メーカーが専用のスコープ、ダットサイトを開発しています。
それはドットが上下に2点あり、1点をサブソニック弾でゼロイングすると、スーパーソニック弾で撃った際にはもうひとつの点に着弾するように設計されたスグレモノです。
スコープだけでなく、伏せ撃ち用のバイポッド、光学照準機器搭載用レール、特殊運搬用ケース、といった必要なアクセサリー全てが付属してきます。
分解してこの特殊ケースに収納すると、外見からはまさか狙撃銃を携帯してるとは思われません。
今後はSPR-300を採用する機関は増えていく事と予想されます。







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Posted by ELITEMASTER  at 17:08Comments(0)装備品・訓練