2015年05月08日

アメリカン・スナイパーを見て



米国では日本より一足先にハリウッド映画が公開になります。米国に住む特権のひとつです。シールチームのメンバーであったクリス・カイル氏の実話を元にした映画『アメリカン・スナイパー』を早速観て来ましたので、その感想を述べてみたいと思います。

この映画はアクション映画のジャンルに分類されるのかもしれませんが、完全な人間ドラマです。戦争とはカッコいいものではなく、いかにして戦争が社会の内部から蝕んでいくかを描いた作品です。ですので『ブラックホーク・ダウン』のような派手な銃撃戦シーンはそれほど多くはありません。ですのでアクションを期待している人はガッカリするかもしれません。

テキサス州出身のクリス・カイル氏は9・11をニュースで見て米海軍シールチームに入隊する事を決意し、米海軍に入隊します。20代後半の入隊は遅い部類で、シールの教官に『やめちまえ、このジジイ!』と怒鳴られても『俺は絶対に止めない!』と強固な意志を見せます。こういう時のテキサス人は本当に強いです。見ていて米軍入隊した時の自分自身とオーバーラップしてしまいました。



見事シールに選ばれ、幸せな結婚と2人の子供に恵まれて幸福な家庭を築きながらも、4度の戦場派遣を経て、PTSDと闘いながら家族を取り戻すまでの様子が描かれています。クリス・カイル氏は戦場では水を得た魚のようになり、平和な米国に帰還しても心が安らぐ事はなく、戦場が恋しく感じるようになってしまいます。これは私自身もそうでした。アフガニスタンから帰還後、今まで普通に感じていた先進国の生活が心地悪く感じる感覚がしばらく抜けませんでした。運転中に工事現場に差し掛かった時に、コンクリートを砕く粉砕機が『ドドドド…』と音を立てた瞬間に、反射的にハンドルを切って反対車線に飛び出してしまったり、タイヤがパンクした音を聞いたら、反射的に伏せてしまったりしました。また夜中に起きて『しまった!寝過ごした!歩哨につかないと!』と、自分がどこで寝ているのか理解するまでしばらく時間がかかったりしました。ですのでクリス・カイル氏の精神状態がよくわかります。私がそこまで精神的に壊れなかったのは、日本人としての武士道がDNAの中にあったからでしょう。ただ私自身も4度も戦場に派遣されていたら、どうなっていたかはわかりません。

映画の内容に触れるので、ここから少し反転します。

それはともかく、クリス・カイル氏は最終的には家族の大事さを理解し、普通の人間としての心を取り戻しました。海軍も除隊して、傷ついた退役軍人たちをケアするボランティア活動を開始します。ところがある日、退役軍人に射撃を教えていたら、その精神異常者に射殺され、短い人生に幕を下ろす事となってしまいます。ラストシーンは、映画館内のほぼ全ての人が泣いていました。

ここまでです。

ではアクションですが、市街地におけるスナイパーの重要性がよくわかる映画となっています。突入部隊を遠距離から援護し、部隊の目となります。必要に応じて敵に射撃を加え、多くの仲間の命を救います。使用する狙撃銃はレミントンM700カスタムのボルトアクション・ライフルです。


追記です。


また責任重大な狙撃手としての任務がよく表現されているシーンの一つに、イラク人の女性と子供が爆弾を抱えて友軍に近づいていく場面があります。スポッターが『おい、もし間違って民間人を撃ったらリーベンワース(軍刑務所)行きだぞ…』というシーンですが、私自身も同様の経験があるので、手に汗握って観てしまいました。
ただ納得いかないシーンもありました。コンボイで移動中にSATCOM(衛星電話)で米国の妻と会話するシーンがありますが、これは危険極まりない行為で、絶対にやってはいけません。シアターではゲートを出たらチャンバーに装填し、再びゲートに戻るまで臨戦態勢になければなりません。狙撃地点で監視任務中にも同様にSATCOMで妻と会話し、今度はその様子をリアルタイムで流していました。重大なOPSEC違反です。こういう箇所はフィクションなのは間違いないでしょう。海軍精鋭のシールチームの人間が、このような危険行為をおこなうはずがありません。
そういった点を除けば、久しぶりに感動できる映画でした。クリス・カイル氏の愛国心に経緯を表し、冥福を祈り、残された家族に神のご加護がある事を願って、終わりにしたいと思います。

飯柴



  

Posted by ELITEMASTER  at 14:34Comments(0)インストラクター